鍼治療の適応症「アトピー性皮膚炎」

 鍼灸治療が得意とする適応症の一例「アトピー性皮膚炎」についてご案内します。治療をお考えの方、ご参考にしてください。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

 日本皮膚科学会によりますと「増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ(アトピー性皮膚炎ガイドラインより)」と定義されています。

アトピー性皮膚炎は、「良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹ができる疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持っている。」ということになります。

では、アトピー素因とはいったい何でしょうか?

アトピー素因とは

(1) 本人または家族が、アレルギー性の病気(気管支喘息、アレルギー鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎など)をもっている。

(2) アレルギーと関係の深い免疫物質であるIgE抗体を作りやすい体質である。

それでは、アレルギーとはなんでしょうか?

アレルギーとは

 もともと、人間の体には、外から体内に侵入してくる、体の成分とは異なる外敵(ウイルスや細菌)に対して、退治しようとするしくみが備わっています。これを「免疫」といいます。

 侵入してくる異物のことを抗原といい、それに対抗して体が作る免疫物質を抗体といいます。一度作った抗体は記憶されます。再び異物(抗原)が侵入してくると、記憶に基づいて抗原を退治するための抗体が作られます。侵入してきた抗原と抗体が結合すると、抗原抗体反応(免疫)が行われ免疫機能が働くというわけです。

 本来は体を守るはずの抗原抗体反応(免疫)が、同じ異物に対して「侵入→攻撃」を繰り返している間に、無害であるはずの花粉や食物、ダニなどの異物に対して過剰に働いてしまい、くしゃみ、鼻水、かゆみなどの免疫反応をひき起こして私たちを苦しめているのです。これがアレルギー反応です。

 「アレルギー反応」は、「免疫」と反応の仕組みは同じですが、体にとっては、病気をひき起こす「免疫の過剰反応」ということになります。

それでは、IgEとは何でしょう?

IgEとは

 侵入してくる異物(花粉や食物、ダニなど)に対抗して体が作る免疫物質のことをIgE抗体といいます。IgE抗体は、リンパ球のヘルパーT細胞の指示でつくられています。
 このヘルパーT細胞は、抗原の種類によって担当が分かれているのです。ウイルスや細菌の場合はTh1細胞、花粉や食物、ダニなどのアレルゲンはTh2細胞が担当して攻撃の指令を出しています。Th1細胞とTh2細胞はお互いの働きを抑えるようにしてバランスをとっています。
 この免疫バランスが崩れてTh2細胞が過剰になると、IgE抗体の産生が増えてアレルギー症状が起こるのです。

  IgE抗体は、皮膚の下や腸の壁近く、気道などに多く待機しています。
 皮膚で反応が起これば、かゆみや湿疹、腸の壁で起これば食物アレルギー、気管支で起これれば喘息、鼻や眼であればアレルギー鼻炎・結膜炎という具合に、アレルギー反応の起こる場所によって症状は異なります。

アトピー性皮膚炎の症状は?

 かゆみがある湿疹です。 赤みのある湿疹、ブツブツと盛り上がる湿疹、ジクジクと水分の多い湿疹、ゴツゴツしたしこりのような湿疹などです。
 掻くことによって皮膚が厚くゴワゴワしたり、かさぶたができたりします。
 湿疹ができやすい部位は、個人差がありますが、顔、耳、首回り、脇の下、肘の内側・外側、太ももの付け根、膝の表側・裏側などです。

 アトピー性皮膚炎の症状は年齢によって変化します。多くは、乳幼児期に発症し、成長とともに治っていく傾向があります。
 ただし、大人になるまで続くことや、一度治った人が再発することもあります。また、年齢に応じて症状の傾向が変化し、乳児期は頭や顔に多く、幼児期にかけてだんだんと体や下肢に広がります。
 特に関節部分にできやすく、皮膚の乾燥が目立つようになります。思春期から青年期になると、顔や胸、背中、肘など上半身に湿疹ができやすくなります。

では、アトピー性皮膚炎の症状はどうして起こるのでしょうか?

アトピー性皮膚炎の症状はなぜ起こるのでしょう

 アトピー性皮膚炎の原因には、アトピー素因や皮膚のバリア機能が低下した乾燥状態に、アレルゲンの侵入(ダニ、ほこり、食べ物など)やストレスなどの多様な環境的要因が重なって起こると考えられています。  

 皮膚のバリア機能とは、外からの刺激や雑菌などの外敵が体内に入り込まないように、また体内から水分などがもれないように守る大切な機能です。皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織という3層からなり、表皮のいちばん外側にある角層が、このバリア機能を担っています。

 アトピー性皮膚炎の人の皮膚は、このバリア機能が低下しているため、外からさまざまな刺激やアレルゲンが侵入しやすくなります。

 アレルゲン(抗原)が侵入すると、それを攻撃し、からだの外へ追い出そうとする免疫物質(IgE抗体)と結びつき、ヒスタミンという物質を出すことで炎症がおこります。

 また、掻き壊しによりバリア機能が低下した皮膚は、ちょっとした刺激でもかゆみがおこりやすい状態のため、さらに掻いてしまい、よりバリア機能が破壊されるという悪循環に陥りやすくもなります。

鍼治療では

 鍼治療がアレルギー疾患を改善する作用機序としては、

●IgE抗体の産生を抑える
●Th1/Th2細胞のバランスをとる
●アレルゲンを誘発させる好塩基球の活性化を減少させる等が考えられています。

 鍼治療が免疫系に影響を及ぼし、症状を改善させることが研究によりわかってきています。

*好塩基球は、白血球の中で顆粒を産生する事ができる顆粒球の1つです
 好塩基球で産生される顆粒には、ヒスタミン、ヘパリン、ヒアルロン酸などが含まれています。顆粒の中でも特にヒスタミンは、アレルギー反応の際に放出され、アナフィラキシーショック・じんましん・気管支喘息などを引き起こすとされています。

  アトピー性皮膚炎に関係するキーワード、アトピー素因、アレルギー、免疫、IgE抗体についてご理解いただけましたでしょうか。

  ご自身の体に何が起きているのかということを正しく理解して治療に取り組んでください。 アトピー性皮膚炎は、日常生活におけるセルフケアが非常に大切な疾患です。

 鍼治療を始めようと思われたこの機会に、今一度ご自身の生活を見直していただきたいと思います。お一人お一人に合ったケアについてアドバイスさせていただきます。

 


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